すずめの歌

夫と2人暮らしの日々

降って湧いた「負の遺産?」

先日、遠方の疎遠な親族の死の知らせが届いた。


認知症でグループホームに入居していたらしい。


配偶者に先立たれて、子もなく、
成年後見人が死後の後始末をしたらしい。



故人とわずかに交流があった親戚の1人に、知らせがあり、
それが、我が家にも伝えられた。



その親戚が、
「自分が代表して対応する。

成年後見人が書類を送って来るので、
それまでは何もせずに待て」と
指示してきた。


それで、我が家は、それに従った。



待ち続けた書類が届いたのは、ようやく、2ヶ月後。



親戚は、すぐに、
「自分が、成年後見人に、

財産目録の債務欄が空白な点などを追及するから、
それまで待て」と
言って来た。


そして、親戚は、
「債務の欄が空白なのはおかしい。
債務額をキチンと知らせろ」と、
成年後見人に要求したらしい。


しかし、どうやら、相手にされなかったらしかった。



更に、むなしく3週間が経った。



結局、親戚は、
「弁護士や司法書士に相談してみたが、
何も分からないまま。
進展なし」と、
報告してきた。



その時に、親戚は、
「故人は、かつて自分で事業を興していたらしい。
その際の債務なのかどうか不明だが、

1億円以上の債務があった可能性もあると、
成年後見人が言っていた」と、伝えて来た。



そして、親戚は、
「自分は、故人には債務はないだろうと思う。
しかし、成年後見人は義務を果たしていないと思うので、

引き続き、この点を追及する」と
言って来た。



しかし、私と夫は、
「1億円以上の債務の可能性」を聞き、ギョッとした。



故人の財産目録にあった、預金・現金は、極めて少額である。


にもかかわらず、「1億円以上の債務の疑い」とは…。



しかも、故人の興した会社は、
親戚の誰もが、その存在を知らなかった。


遠方の上、電話帳にも掲載がなく、何の手がかりもない。
ネット上には、名前と住所が載っていたが、
それ以上の情報は、ゼロ。


今すぐには、私たち素人には、調べようがないのである。



それまで、
ノホホンとしていた私と夫は、一気に、背筋が寒くなった。


それで、急遽、ネットで色々調べた。



それで分かったことは、


①遺産放棄は、「故人の死を知ってから3ヶ月以内」。
これは、厳しい定め。
これを越えると、債務も、相続人が引き継ぐ。

ヘタすると、自己破産。



②成年後見人には、
死後の火葬、電気水道代などの債務を支払う仕事はある。
しかし、

通帳で定期的に引き落とされている債務や明確な督促状以外の、
過去のハッキリとは分からない債務まで調べ上げる義務はない。




相続放棄が可能な3ヶ月までは、あと1週間しかない。


しかも、土日・連休を除くと、正味3日しかない。


私は、青ざめた。


本来ならば、司法書士などに依頼し、面倒な手続きを委託したい。
こちらは、法律に疎い、ズブの素人なのである。



しかし、残された時間は、わずか3日。


相談に1日取られれば、残り2日しかなくなる。


それでは、
遠方の裁判所への書類送付が間に合わなくなるであろう



私は、
しゃにむに自力で書類を揃え、
家庭裁判所へ申請する覚悟を決めた。



ネットで必要書類を調べ、
区役所で揃える戸籍書類をリストアップした。


故人の戸籍書類も揃える必要があるが、
これは、後日提出でよいらしい。



それから、知人に司法書士さんがいたことを思い出した。


メールで、このやり方で正しいかどうか、相談してみた。


土日なので、返事は週明けになり、どうせ間に合わないだろう、
と思った。


しかし、ダメ元で相談してみた。



ところが、思いがけず、
その司法書士さんが、すぐに電話をくれた。


なんと、
「今から、面談しますか。

大至急で着手しないと、間に合わなくなります」
と言うのである。


それで、すぐに、面談をお願いした。



結果的には、その司法書士さんに依頼し、全てをお任せした。


すぐに着手して下さり、何とか期限内に申請が間に合う見込みとなった。


専門家は有り難い…と、実感した。




気づいたら、いきなり、崖っぷちに追い詰められていた。


絶体絶命。


それが、一挙に救出され、安全圏に脱出できた。


夜もよく眠れない不安感から脱し、
枕を高くして安眠できるようになった。




もちろん、数万円を出費するのだが…。



ひょっとして、棚ボタで、数万円の遺産が貰えるのかも…と
当初は、大甘に思っていた。



しかし、現実は、見事に反転した…。




◆教訓1 
疎遠だろうが遠方だろうが、

いったん、相続人の1人になった以上、
故人の遺産額、特に、債務をいち早く知る必要がある。
親戚から孤立し、疎遠な親戚は、特に危険。



◆教訓2
大事なことは、人任せではダメ。
特に、相手が高齢の場合、「半ば認知症」の場合もある。
たまにしか接触がない場合、こちらが察知できない場合もある。
だから、人を信じすぎず、

自分で調べ、主体的に行動しなければならない。



◆教訓3
自分の死後に、周囲に迷惑をかけぬよう、生前の準備が必要。
大事なことは、キチンと確実に、複数に伝えて置く。
今回も、もし、故人が「会社を興したが、債務は清算済みだ」などと、
呆ける前に、親戚たちに伝えて置いてくれたら、
こんなにも皆が焦らずに済んだ。



※「相続放棄」をする前に、
調査中に、財産を調査する期間が不足だという理由で、
「3ヶ月の期限を延長する」申請をすることも可能らしい。


しかし、このケースの場合、
調査を続けた結果、債務が出て来る可能性はあっても、
預金などが新たに出てくる可能性は低いと思われた。


把握されている預金・現金は非常に少額である。


ならば、財産調査をプロに頼んで更に出費するよりも、
最初から「放棄」を選んだ方が、手間も出費も少ない…
そう、私は判断した。


数万円の遺産をそのまま貰うことは、
すなわち、
後日、思いがけない債権者が出現する可能性を引き受けることにもなる。


きわめて臆病者の私と夫には、そんな勇気は、なかった。