すずめの歌

夫と2人暮らしの日々

私は無力で愚かな親

息子が出て行って、3か月半が経った。



ようやく、
「息子の人生にとって、私は99%不要な存在だ」
という現実を受け入れ、
息子を忘れつつある。



頭の中で、勝手に鳴り響く楽曲も、
当初は、
「最愛の相手に一方的に捨てられ、心がズタズタに引き裂かれる」

歌詞の歌ばかりだった。

しかし、最近は、
「愛しているからこそ、別れを選び、離れて行く」

という歌詞の歌になってきた。


(今は、小林旭の「北へ」)



…もう少し辛抱すれば、息子を忘れられそう…
という希望が見え始めた…。




そして丁度、
もし、「永遠に○○歳でいる」を選ぶなら、
何歳を選ぶか?
という問いかけを、知人からもらった。



考えてみた結果、私は、
「今だわ…」
という結論を得た。



すなわち、
今の私は、


イヤイヤ仕事に行かなくても良い。


子育て義務も終了した。


長く親から植え付けられて来た
【お前はダメ人間】という自己否定の価値観から
少しずつ離れられて来た。


持病も、すべて小康状態。


生まれて初めて、自由。


という状況だ。



つまり、
60数年生きてきて、


今が、
一番幸せ…なんだなあ…。


あぁ、良かった…。


うれしい … 。


… そう、思えたのだ…。




ところが、
そう思えたのは、 束の間 だった。




突然、
息子の周囲にいる人物から、
息子の悪い話を聞かされてしまった。



その人は、軽度だけれど発達障害・知的障害がある。


通常よりも、
真っすぐ過ぎ、些細なことを大きく受け止める傾向がある。


私がそれを知らなかったため、
すごく振り回されてしまった過去の経験もある。


だからもう、その人の話を100%真に受けることは出来ない。



けれど、
完全に聞き流すことも無理な話だった。



それは、
「息子さんが、

一般道は120キロ、高速は140キロで運転していると
自慢していましたよ」
…という話。



他の人にも、確認をとってみた。


すると、
「確かに何か自慢はしていたが、
話半分ではないかと自分は思う」とのこと。


こちらは、かなり信用できる人だ。




夫と、真剣に話し合った。


「興信所に尾行してもらい、ドラレコに記録してもらって、
ひどい違反の場合は、警察に通報してもらうべきか?」


「しかし、前回の事故同様、
捕まっても運が悪いと思うだけで、
反省は全くしないかも…。
スピード違反を繰り返すのでは?」



ネットでも、調べてみた。


どうやら、
ハンドルを握れば必ず違反スピードを出す「スピード狂」、
一種の「強迫神経症」「依存症」の人がいるらしい。



たしかに息子は、
小学生時代、いじめにあった時、
頻繁過ぎる手洗いなど、「強迫神経症」になった前歴がある。



更に、依存症について調べてみた。



「専門病院でないと治せない。
しかし、たいていの場合、自分が病気だとは認めない。
本人がどん底に落ちて自覚しない限り、治療できないし、

家族に出来ることはない」


という厳しい内容だった。




夫は、息子について、常々、
「自分とよく似た性格」と言っている。



確かに夫は過去、長年にわたり、「買い物依存症」だった。


(読みもしない本を、大量に買いまくり続けた。)



また、
「酒による失敗で家族に被害を及ぼすことを繰り返すのは、
アルコール依存症」
という定義によれば、
夫は、アルコール依存症でもあった。



今は、幸い、両方とも卒業したけれども。



「依存症になるのは、実は、まじめで責任感が強く、
自己認識もしっかり出来ている人」という
恐ろしい指摘も書かれていた。



確かに、夫も息子も、社会的に見れば、
一見、「真面目」な部類に属すると言える。



真面目過ぎる結果、
ストレスを発散するために、
「依存行為に突っ走る」仕組み…らしい。




前回息子が起こした事故は、人身にはなったものの、
非常に軽く済んだ。

被害者1名と息子本人が、当日受診しただけで済んだ。


被害者の方への直接の謝罪も
「すぐにすっかり良くなったので、来なくてよいです」と、
優しく断られた。

(もっと厳しく怒ってくれる方であったら、

息子のためには、むしろよかった…
と、私は内心思っている。)



被害が最小限で済み、
「非常な幸運」だった…
と、私は思う。


ひどい大事故になっても、仕方がないような事故だった…。



しかし…
息子自身は、そうは思っていないのだろう。



「事故になったのは、たまたま偶然だ。
運が悪かった…。それだけ…」と
考えているのではないか…? ?



私が生んで懸命に育てた子が、もしも、
他人様の命を奪ったり、

他人様に一生重い障害を負わせたら…
私は、どうしたらよいのだろう  ?  ?




答えが見つからない … … 。




私自身は、法律を犯すことは大嫌いだ。


夫も、スピードは出さない運転をする。


そんな私たちの子が、スピード狂だとは … …




人生とは、なんと皮肉で、辛いものだろう … …




考えてみると、
夫の父親も、立派なアルコール依存症だった。


さんざん、妻子を泣かせ、
兄弟から絶縁されたこともある。




夫の父親も、夫も、私の息子も、
共通点がある。



それは、基本的には真面目だが、
非常な臆病者・小心者ということだ。



それで、人よりも沢山ストレスを感じやすく、
「依存症」なしには、生きて行けないのか? ?




そういう自分を自覚出来たとしても、
人様を殺めてからでは、もう遅い。



夫の父親は、70過ぎて病気になり、それで酒を卒業した。



夫は、60を過ぎ、給料が減ってから、本を買わなくなった。


その頃から、徐々に酒も卒業した。




息子は、まだ20代前半。人生これからだ。




今は、まだ、「遅すぎた反抗期」の中にあり、
私と夫の言葉を、

すべて右から左に聞き流し、完全に切り捨てる息子に、
どう、働きかければよいのか?




つくづく、


親は、無力だ … … 。


親は、つらい … 


と思う …。




こんな未来を知らず、
20数年前、妊娠を知り、
希望と嬉しさに満ちあふれたのだった…。