すずめの歌

夫と2人暮らしの日々

離婚もアリ?

1ヶ月前。



ついに、夫が引越しに同意した。




カンの鈍い夫にも、ようやく、
引っ越した方が身のためだという事が解ったのだ。






ところが、
その後の転居先選びが、想像以上に難航している。






私たちの条件は、


・家賃○万円台の3LDKの賃貸マンション。


・出来れば、駐車場付き。


・自然環境の良い所、もしくは大きな公園の徒歩圏。


・地下鉄徒歩圏内。


・4階以下。
 エレベーター付き。
 なるべく階段に手すりがある。


・エアコンを設置出来ること。


・なるべく南向き。





もっと家賃を張り込めば、良い物件は存在する。



しかし、私たちビンボー人には、ムリなのだ。






1つだけ、「こりゃあ、良い!」と感激した物件があった。



ところが、ワックス臭なのか?


何かの化学物質の臭いが充満している。




「臭いが取れれば、ゼヒ借りたいです」と
依頼したが、
家主側は、
「臭い?私は感じませんでしたが…」という、鈍い反応。





私の依頼により、
ようやく、換気扇を回すことになったらしいが…。




しかし、
密室で、
あんな強い臭いを数週間、放置したのだ。




換気扇を回すくらいでは、
なかなか臭いは
抜けないだろう…。




万一、
「シックハウス症候群」になった場合、
根本的治療法は無いらしい。





なので、私は、この物件を
ほぼ諦めかけている。







2人暮らしなのに、
3LDKが必要な理由は、
夫の本が
1室を占拠するからだ。





夫曰く、
「本は、オレの息子たちであり、娘たちだ。」






この1ヶ月間、
私は1日中、
インターネットで
物件情報を漁り続け、
夫に、
あれこれと相談を持ちかけてきた。




ところが、
夫は、
テレビを見ながら
ウルサそうに返事をし、
勝手な要求をほざくだけだ。





そして
自分は、今まで通り、
テレビを見たり本を読んだり昼寝したりして、
夜も
ぐっすりと眠る。




その傍らで、
私は、
1日3度の炊事に追われつつ、
物件漁りと検討に忙殺され、
休息も余暇も、
まるでとれなかった…。





ようやく良さげな物件を発見すると、
不動産屋へ行き、内覧させて貰う。




その不動産屋との折衝は、全部、私だ。



夫は、傍で黙って聞いているだけ。



すべて、私に丸投げである。







1ヶ月も経たないうちに、
私は、
すっかり体調を崩した。




真夜中に目が覚め、その後、眠れない。



頭がボーッとするから眠りたいのに、
気持ちが昂ぶり、
昼寝も出来ない。




1日中、食欲がない。




体重がドンドン落ちていく。



若い頃に懸命にダイエットしても届かなかった体重に、
スルスルと落ちてしまった。






今日、こらえきれなくなり、
ついに
夫に言った。




「あなたの本のせいで、
こんなに私が苦労させられている。



安月給のくせに、こんなに本を大量に買い込んで、
しかも、
これから狭いところへ引っ越すのに、
なおも減らさない。




そんなワガママな人はいない。



妻なら誰でも文句を言うはず。




でも私は、今までずっとガマンしてきた。




それは、
父の横暴に
母がずっと耐えているのを長年見てきて、
知らず知らずのうちに、
ガマンするのが妻の役割と思い込んでしまったから。




あなたも、そうなんでしょ?




お父さんがワガママして、
お母さんが
じっと辛抱してたんでしょ?




ワガママ出来るのが夫の特権なんだって、
そう
思い込んでいるんでしょ?




オレの稼ぎでお前を食わしてやったんだから、
オレが
思い通りにするのは当然の権利だって、
そう思っているんでしょ?」





夫は、私が話し始めると、すぐにキレた。




甲高い声で、
「そんな事言うなら、もうメシは要らん!」と、
激しく怒鳴った。





今までの私なら、ここで引っ込んで、口を閉じた。




しかし、私は今回は、ひるまなかった。





「私は、
あなたがリタイアして家にいるようになった2年前にも、
体調を崩した。



これで、
あなたのせいで私が体調を崩すのは、2回目。



もう、たくさんだわ。



あなたの本のせいで、私はずっとガマンしてきた。



あなたの本のせいで、貧乏も強いられて来た。



今も、こんなに苦労させられている。



もう、たくさんだわ。





あなたは、二言目には、
『二人で頑張ろう』って言う。




だけど、
頑張っているのは、私だけ。




あなたは、
今までどおり、
ゆったりのんびり過ごしてる。




あなたの本のせいで私が苦労しているのに、
あなたは
それを当り前だと思ってる。





結局、
私より、
本の方が大事なんだよね?




私なんか、
便利な飯炊き女に過ぎないんだよね?





私は、今まで、自分を大事にしなさすぎた。




常に、自分を犠牲にしてきた。




でも、
今の私は、
同居するなら、
私をもっと大事にしてくれる人と暮らしたい。




それが出来ないなら、一人で暮らす方がマシ。




だから、もう
別居して離婚しよう。




あなただって、
飯炊き女なしでも、何とかやっていけると思う。



自炊すれば良いんだから。




あなたの舌は、
たいして美味しい物じゃなくても平気なんだから、
自炊で十分やっていけるよ。」






私は、今まで、
「離婚するには資金が足りない」と思って来た。




しかし、
今の住まいを売却すれば、
資金は何とかなりそうなのだ。





もちろん、貧乏生活は続く。




しかし、それは離婚せずとも、同じなのだ。



なぜなら、
夫は、百歳まで生きるつもりでいるからだ。




となると、老後資金がかなり必要だ。



もし離婚してしまえば、
老後資金は不足する可能性がある。




しかし、そんな事、知るもんか。




もう、たくさんだ。






この2年間、
夫と2人で散歩するのが
私たちの習慣だった。




散歩中、
私には色々と話したい事があり、
まくし立てる事が多かった。



けれど実際は、
夫は、
私の話を半分しか聞いていない。



半分以上は聞いておらず、気にも留めない。




私が、一方的に、
空中に向かって
言葉を吐き出しているに過ぎない。



その事に、
私はこの頃、
虚しさを感じるようになった。




けれども、
夫は
自分の話は、身をいれて聞いて欲しい。



私は、
夫に質問したり、話を広げたり深めたり、
熱心に聞き取る。




だから夫は、
私に話すことを楽しみにしている。




実に、身勝手だ。





また散歩中、
話がしやすいように、私が夫と腕を組むと、
夫は、
自分の脚力にまかせ、
私を引きずるようにして歩く。



私は、
片腕だけをグイグイと引きずられ、
かなり歩きにくくなる。



その事も、
私はこの頃、イヤになってきた。




なぜ、この人は、
脚力の弱い私に
歩調を合わせてくれないのか?





それは、
夫が「自己本位」で、
私への「思いやりがない」からだ…。




私は、ようやく、その事に気づいた。





要するに、夫は、「自分勝手な人」なのだ。






そもそも、なぜ、
不動産屋との折衝を、
私が一手に引き受けているか?




それは、
夫の「現実処理能力」が「中学生レベル」だからだ。




何事も、
夫に任せておくと、
重要点が抜け落ちたまま進行し、
極めて不満足な結果に終わる。




そういう事は、日常茶飯事だ。





だから、
たとえ大変でも、
最初から
私が自分でやった方が
遙かに満足できる結果になる。




しかし、夫は、
その現実を無視し、
あたかも
私が困った「出しゃばり女」であるかのように、
尊大な威張った態度を崩さず、
私に対する感謝の意やねぎらいを
少しも示さない。





しかし、今日、
私は、
自分が体調を崩すほど夫に奉仕させられている事実に、
ハッと気がついた。






以前の私は、夫を
「子育てのパートナー」として、
大切に思ってきた。




しかしもう、
子育ては終了した。





今は、
1対1の「個人」同士の対等な関係なのだ。





私は、
1人の個人に戻って、
自分の幸せを追求して生きて良いのではないか?





もう、夫の犠牲になることなく…。






そんな思いが、今日、初めて兆した。





さて、今後、どうなっていくのだろうか…?