すずめの歌

夫と2人暮らしの日々

ガキ亭主

夫は、
43年間勤め上げた職業柄だろう、
私に対しても、
常に「上から目線」だ。




25年前に結婚して以来、
夫は、
自分の名前に
「さん付け」をして呼ぶことを要求する一方、
私の名前は
呼び捨てにし続けた。




当初、私は「些細な事だ」と思っていた。





しかし、
10年以上経ってから、強い疑念が湧いた。




「対等な関係」なら、
「お互いの呼び方」も対等であるべきだ。


私は、そう思った。





それで
夫に、
私の名前を「さん付け」で呼ぶことを要求した。




すると、夫は
突如、私を呼ばなくなった。




従来、呼び捨てに私を呼んでいた場面で、
全く呼ばずに済ませるようになった。





そうやって、また10年が過ぎた。





2年前のある日、
ふと、私が
ふざけて夫の名前を「さん」ではなく
「ちゃん」で呼び始めた。




それ以来、
夫も私を真似、
私の名前を「ちゃん」付けで呼び始めた。





しかし、
本当のところ、
彼の意識の中では、
ずっと私を
「呼び捨て」にしている気がする。




「妻はオレより下の立場だ」
「オレが妻より上の立場だ」
という根本的な夫の意識は、ずっと変わっていない。



私には
そう思える。






夫の父親とその親族を観察すると、
パワハラ気質」な人が多い。



「自分が一番エライ」という信念を持ち、
他者を対等に尊重せずに
見くだして支配したがるタイプの人が多い。






その上、
夫が
43年間勤めた職業では、
彼は常に
相手を見くだせる立場、
上から目線で接する事が許される立場にいた。




大学出たての青二才のヒヨッコだった時から、
ずっとそうだった。





この長年の
甘っちょろい職場環境によって、
夫の「救いがたい幼稚さ」は、
岩盤と化したのだと思う。




そして、
父親の血筋から引き継いだ
「生まれ持った傲慢な気質」が、
更に
拍車をかけたのだろう。






夫の「現実処理能力の低さ」を
日常的に補い、
何とか現実生活を維持しているのは、私だ。






今回の「引越し先選び」でも、
「現実問題に対する夫の幼稚さ」が
無惨に露呈した。




夫の言動は、
トンマな言動ばかりで、
必死に取り組む私の足を引っ張ってばかりだ。





耐えきれなくなった私が
「中学生レベル」と指摘すると、
(真実は小学生レベルなのだが)、
夫は
キレまくる。




彼は幼稚なクセに、プライドだけが高いのだ。






いっそ、離婚したい。




しかし
離婚後、
二人とも100歳まで生きてしまった場合、
老後資金が不足する。





結局、息子に迷惑をかける。






だから、浅慮は禁物。


どっしりと構えるしかない。






そう深く覚悟を決めた私を、
夫が見くだしている事に、
私は心底、怒りを感じる。






私の父も、
「現実処理能力」が、極端に低い人だった。




それを長年見て育ち、
他の大人の男性を知らずに育った私は、
知らず知らずのうちに、
「男というものは現実処理能力が低いものだ」と
思い込んでしまったのだ
と思う。





だから、
「父に似た男」に会った時、
違和感なく
「結婚相手」として選んでしまったのだと思う。





夫の父親は、
いつもエラそうにしてプライドの高い人だったが、
実に
幼稚な人だった。



そんな父親が「男性モデル」だった夫が、
まともな「大人の男」に
育つはずがない。





私の両親も、
今思えば、
二人とも、
実に幼稚な人たちだ…。




その二人に育てられ、
大人と言えば
その二人しか知らなかった私が、
マトモな結婚相手など、
選べるはずもなかった…。