すずめの歌

夫と2人暮らしの日々

鴨たちの婚活パーティー

すずめ

ある心理学の教授の話を
聞いた。






教授は、
「クジャクの雄が
どんなに綺麗な羽根であれ、
クジャクの雌には
何の意味もない」と
いうような事を

語った。








私は内心、
「それは違う」と思った。








なぜなら、私は
一昨年の秋、


ある池で、


マガモたちの
「婚活パーティー」を
目撃したからだ。









夏の間は、
雄も、
雌同様の地味な茶色で、
雌雄の別が

わかりにくかった。







しかし、
気温が

低下していくに従い、


雄たちは、
次第に
色鮮やかに

変身していった。







とりわけ、
艶のある
ブルーグリーンの頭部が、
自然の色とは

思えないほど
見事な色に変わった。








夏の間は、
鴨たちは、

池の岸辺に
ぐるりと輪になって

座っていた。








時折、
エサをついばむために、
水に

降りて行く。






しかし、殆ど、
岸辺で
うつらうつらと
寝て
過ごしていた。








ところが、
雄たちが

見事に色づくと、


池の様相は、一変した。









雄も雌も、
100羽くらいの鴨たちが
一斉に

水上に繰り出し、


いくつかのグループに分かれ、
お互いを見つつ、


長時間、
グルグルと

泳ぎ回っているではないか。








もはや、
岸辺に

とどまっているのは
少数派だ。








池の水面は、
互いを見合う鴨たちに

埋め尽くされた。








時折、
雄の一部が
興奮した様子で、


突然
バタバタと羽音を立て、
水の上1メートルくらいの高さに
飛び上がる。








いかにも、
一大お見合ダンスパーティーで、
自分のいいところを
雌に

見せつけようと
躍起になっているのが


ありありと
見て取れた。








つまりは、
雄鴨は、
いかに
自分が健康で元気かを、


すなわち、
自分が

雌に
いかに
健康で丈夫な子種を

与えられるかを


必死に、
アピールしていた……。







私には
そう思えた。








健康の
わかりやすい目安になるのは、
雄としての

「色づき具合」だろう。








見事に
色づいていればいるほど、
全身も
健康であることの

証明になるはずだ。







大きく羽ばたいて
飛び上がってみせるのも、
自分の
力強さの
1つの証明なのだろう。








時間をかけて
じっくりと
雌が雄を見ているのは、


やはり、
雄1羽1羽の

細かな差異を観察し、
比較検討し、


これぞという
自分の好みを

選び抜いているのだろう。









池の隅では、
早くも
カップリングに成功した
数組のつがいが


互いに
仲良く寄り添うように
満足げに

静かに泳いでいる。








中には、1羽で
2羽の雌を引き連れた
雄もいた。







2羽の雌が、
1羽の雄に

つき従い、


等距離、同一角度の
きれいな

二等辺三角形となって
泳いでいく。









その雄の
グイグイと頭を振りながら
力強く

泳ぐ様子が
いかにも得意気、
ウキウキと
嬉しげなのには
思わず、

吹きだしてしまった。








あの心理学の教授も、
雄たちが

次第に色づいていく様子や、


繰り広げられる
大婚活パーティーを


つぶさに
見る機会があれば、


なるほど、
雄の美しい色づきは、
「雌へのアピール」なのだ……と、


きっと
得心したに違いない。