すずめの歌

夫と2人暮らしの日々

この愚妻にして、この愚夫あり

夫に尋ねた。




「今、私がこうやって、
ここから引っ越そうって、
ガーガーガーガー、

うるさく言い続けてなかったら、


今のあなたは、
引っ越そうという考えは

持ってなかったでしょ?」





夫は、案の定、ムッとした。





「何で、そんな事、今言うんだ」と
怒った声で
答えた。






図星を突かれると、
夫は、大抵怒る。






人生の重大局面での
夫の過去の行動を振り返ってみると、


潮の流れが
明らかに変わったにもかかわらず、


従来の方針を転換できず、

過去の方針に
何年も
しがみつき続け、


歳月や金銭を
ズルズルと
ムダに消費したケースが多い。





プライベートでも、仕事でも、同じだ。






要するに、
夫は、
情勢の変化を

客観的に見極める能力に欠け、
決断力にも

欠けるのだ。






事態を客観視すれば見えて来る事よりも、
「自分の願望・欲望」を優先させ、
「希望的観測」を

優先させてしまう。






事態が相当に煮詰まり、
自分にも

痛いものが
ハッキリと降りかかり出した時、


夫は
初めて、
「このままではダメだ」と

気づくらしい。






決断力に欠けるのは、
勇気が

ないためだろう。






臆病な夫は
未知の新しい局面に飛び込むのが
怖ろしいため、
「現状維持」の判断に
傾きやすいのだ。






プライベートでは、
「体面」「世間体」「他人の目」を

気にし過ぎるため、
余計、
「現状維持」に

しがみつきやすい。






「現状維持」の方が
周囲の注目を浴びないからだ。







そして、
先の見通しに目をつぶり、
「臭い物にフタ」をして、


現実の目先の快楽に身を委ね、
アホなテレビを見ては
「アハハ」と笑って過ごす……。







こんな夫を、
私は

今まで、


何事にも悲観的に暗くなりやすい私を
明るくゆったりとリラックスさせてくれる、
「楽観的な人」だと、



肯定的に評価していた。







ところが、
結婚25年も経った今、

初めて、
そうとばかりも言えない事に気づいた。






特に、
夫がリタイアし、

ズッと家にいるようになってから、
「夫とは、

こんな人だったのか……」と
初めて知り、
認識を新たにすることが多い。







「新しい認識」と言っても、
大抵は、
「失望」だ……。







これまでの
私自身も、
相当、愚かだったのだ……。







何も
見えていなかったし、


何も
解っていなかったのだ……。








この愚妻にして、この愚夫あり……。